【リハビリコラム】いつまでも食べられるという幸せ

当たり前のことだと思いますが、
皆さんは美味しいものを
いつまでもたくさん食べたいですよね?

年齢を重ねても
『食べる』という機能を維持するためには
“噛むこと”と“飲み込むこと”が大切です。

今回は“嚥下”に着目してみましょう。

嚥下という文字には、
燕(ツバメ)という漢字が含まれており、
嚥下は英語で“swallow”といいます。

解剖図を見てみましょう。

この図は頭部を
矢状面で見た(横から見た)図です。

そこで分かることは、
舌の大きさが非常に大きいということです。
舌は筋肉でできており、
しっかりと食べ物が食べられるよう
いろいろ複雑な動きができるようになっております。
人間にとって舌の動きは
生命を維持するのにとても大事な役割があります。

また、舌だけではなく
のど周囲の解剖図を見てみましょう。

のどにも実は飲み込むための
大切な筋肉がたくさんついています。
おいしく食べ物をいただくためには
これらの筋肉を
しっかりと動かすことが大切になります。

そして、食べ物を消化するには
まず唾液がしっかりと出ないといけません。
年齢を重ねると
この唾液の分泌が低下する傾向があります。
そのため、唾液が出にくい方には
唾液腺マッサージがお勧めです。

図のような位置に
耳下腺、顎下腺、舌下腺が位置していますので、
皮膚の上からでも刺激を与えると
自然に唾液の分泌が促されます。

飲み込むためには、神経も大切です。
人間の嚥下には多くの脳神経が関与しています。
それだけ重要な要素があると考えることができます。

東洋医学ではよく“舌診”といって、
患者の舌を診て治療をしたり、
身体機能を評価したりします。
舌の状態は
カラダの調子を表すといわれていますので、
普段から観察することも大切です。

ここで『反復唾液嚥下テスト』という
嚥下評価の方法をお伝えします。

要するに、30秒間に
何回つばを飲み込めるかを診ます。

3回以上飲み込むことができれば
正常であると判断します。

皆さんもよかったら一度やってみてください。
何も口の中にないのに
飲み込み動作を行うということは
意外と難しいことが分かります。

そして、本来なら飲み込んだものは
胃に入ってしかるべきですが、
中には気道に入って
肺で炎症を起こしてしまうこともあります。
これが誤嚥性肺炎です。

誤嚥のパターンは
噛んでる最中、
飲み込む時、
飲み込んだ後逆流という
3つのパターンがありますので、
嚥下のリハビリの場合は
どこに問題点があるかを
まずは把握することが大切です。

“ぱんだのたからもの”という言葉は、
いろいろな舌や口の動きが含まれており、
誤嚥対策にもってこいの言葉です。

“パンダの宝物”を合言葉に、
発声練習を心がけると嚥下リハビリになりますので、
食事前や時間があるときに
やってみると良いかもしれませんね。

【リハビリコラム】誰にでも過ちはあるから…

いきなりですが、この下の図の上下の線の長さは、
どちらの方が長く見えますか?

多くの方が、下の方が長く見えると思います。
でもこの線は両方とも同じ長さなのです。

これは“ミュラーリヤー錯視”といって、
目の錯覚を感じる典型例です。

今回も、前回に引き続き
医療事故や介護事故を防ぐために、
高齢者のリハビリや介護を行う上でも
大切にしなければいけない概念である
“セーフティマネジメント”について考えてみましょう。

『To err is human. 』という言葉があります。

これは日本語では
『だれにも過ちはあるもの。』という意味で、
人間は思い込みや勘違いなどをするため、
高齢者のケアをおこなううえで
大変重要なキーワードとなります。

では、前回お伝えしたように、具体的な事例として、
当法人グループに属する、ある介護施設の
アクシデント報告書を例にお話させていただきます。

Case.1 フロアで車いすから転倒

フロアで入居者が転倒することは
どこの施設でもあることだと思います。
ここでのポイントとしては、
「なぜ入居者は立ち上がるのか?」という点です。

それには以下の理由が考えられます。

  • 座り心地が悪い
  • トイレに行きたい
  • 周囲の人が気になる
  • うるさい
  • 家に帰りたい
  • 寒い
  • 暑い
  • 長い間座りっぱなし
  • 話し相手がいない
  • やることがない ……etc

入居者様が動く背景には必ず理由があります。
まずはその理由を追及して、
それぞれに対してより具体的な対策を講ずることが
大切になります。

また、普段からの思い込みが事故につながっているため、
思い込みをなくすことも大事なポイントになるかと思います。

Case.2 自力移乗時車いすにぶつけて損傷

入居者様が動作時に車いすやベッド等に身体をぶつけて
ケガをすることも日常よく見られることかと思います。
この場合のポイントとしては、
自力移動した時ぶつけることは防ぎきれないが、
介護スタッフの見守り下であれば
職員の責任になるということです。

対策の鉄則としては
「ぶつけるところはモノもカラダも覆う」
ということです。
介護現場には意外と
ぶつけるとケガをする突起部や金属部等が多いため、
常時注意喚起することにあわせて、
必要であればぶつけた時に傷にならないよう
覆うことも大切な対策です。
例えば、靴下は膝までくる長めのものを履く、
ベッドのフレームをクッション素材で覆う等です。
また、ベッドから車いすへの移乗介助時は、
車いすのフットサポート部分が取り外せるものであれば、
外してから移乗介助する等の対策も大切です。

ひと手間かければ
アクシデント発生のリスクも下がると思います。

Case.3 居室内での転倒

居室内での転倒対策は介護スタッフのみなさんも
一番苦労されていることだと思います。
この場合のポイントを以下の2点に絞って考えました。

① 居室内転倒対策は環境設定が基本

ベッド・テレビ台・タンス・洗面台・トイレ等の配置、
つかまるところがあるか、履物が適切であるか、
床が滑らないようになっていないか、
適切な福祉用具を使用しているか、等
入居者にとって適切な環境設定となっているかが重要です。
センサーマットは行動観察として
一定期間は使用することも可能ですが、
使い方によっては『身体抑制』になる可能性もありますので
注意が必要です。

② 居室内転倒は防ぎきれない

上記環境設定を行ったとしても、
居室内にて入居者様が転倒しないということはありません。
私たちも生活していく上で、
何回かは転んだり、転びそうになったりすることは
あるかと思います。入居者様にとっても同じことです。
そのため、普段から転倒のリスクを
ご本人様やご家族様に理解していただくことも
大切なことであると思います。

ここで“移乗介助100%の法則”を考えてみました。

自立支援の観点から、移乗介助の時に
適切な介助量を提供することが
大切であるということです。
介助量が多すぎても少なすぎても
事故につながる可能性があるということです。

これは生活リハビリにおいても
大切な考え方であると思います。
入居者様の持つ力を日々の動作に反映させることが
身体機能を維持し、事故防止対策にもつながります。

さて、もう一度この図をみて
どちらが長いか考えてみましょう。

答えは、両方同じ長さではなく、
下の方が長くなっています。

同じ長さだと思ってしまった人が
もしかしているかもしれません。
人間の目は周囲の状況に惑わされやすいものです。

“だれにも過ちはあるもの”ということを忘れず、
日ごろのケアに努めていきたいものです。

“Great pains but all in vain.(骨折り損の草臥れ儲け)”
ということわざがあります。

介護に携わる方々の日々の頑張りが
アクシデントにより、
入居者様にとって不利益にならないよう、
Safety managementを強化し、
事故のない環境をめざしましょう!!

【リハビリコラム】セーフティマネジメント

いきなりですが、
この写真はどちらの塔がより傾いて見えますか?

多くの方が、右の方が傾いて見えると思います。

でもこの写真、実は両方とも同じ写真です。
同じ写真であっても、横に並べることで
なぜか右の方が傾いて見えてしまうようです。

これはいわゆる“目の錯覚”というものですが、
医療現場や介護現場ではこの錯覚が事故につながり、
患者や利用者にとって致命傷となってしまう場合もあります。

今回はこうした医療事故や介護事故を防ぐために、
高齢者のリハビリや介護を行う上でも
大切にしなければいけない概念である
“セーフティマネジメント”について
考えてみたいと思います。

『To err is human. 』という言葉があります。
これは日本語では
『だれにも過ちはあるもの。』
という意味です。

高齢者のケアを行う上で、
“間違いない。”
“絶対~~である。”
というように考えてはいけないとよくいわれます。

車の運転でも“だろう運転”より、
“かもしれない運転”が大切であるといわれるのと同様で、
人間は思い込みや勘違いなど、
“過ちは常に存在するかもしれない”
という考え方が高齢者のケアには重要になってきます。

さて、セーフティマネジメント分野では、
施設や病院でケアをしていく上で
バランスを保つべきものが2つあります。

それは活動性と安全性です。

活動性が低いと高齢者は廃用が進んでいき、
基本動作が困難となり寝たきりになってしまったりします。
その一方、安全性が低いと
高齢者は日常生活で転倒したりして
ケガをする確率が高くなってしまいます。

ですので、両者のバランスを保ちながら
ケアをしていくことが大切になります。
そのためにもセーフティマネジメントが必要になります。

安全な介護を提供する上で大切なことの1つに、
セーフティマネジメントがあり、
これを全うすることは我々の使命でもあると考えております。

そのためにはどのようなことに
気をつけなければいけないのでしょうか。

最近、テレビや報道では介護事故や医療訴訟など、
一昔前に比べて当たり前のように目にする機会が
多くなってきたように感じられます。

医療・介護現場には危機管理として、
様々なことを管理していかなくてはいけないという
現状があります。

セーフティマネジメントの話をするときに
必ず出てくるのが“ハインリッヒの法則”という
ピラミッド型の図です。

これは、1つの事故が起こった場合には、
過去に300件のヒヤリハットが起きているということを
図に表したものです。

もう1つ有名なのが“スイスチーズモデル”です。

幾重もの対策をしているにもかかわらず、その隙間をぬって
アクシデントは発生してしまうということを
表したモデルです。

お仕事をされている方等は、
職場等で経験があるとは思いますが、
いつもとは違う状況に陥った場合や、
偶然が繰り返されたときに
アクシデントが発生してしまったという経験を
お持ちになっている方も多いかと思います。

セーフティマネジメントを考える上で
大切なのが“PDCAサイクル”です。

このサイクルを
何度も見直すことが大切であるといわれています。

特に大切なのが
“Check確認”と“Act=Action処置(改善)”の部分です。
的確な評価による確認作業で
有効な改善策を施さないと
また同じような事故が繰り返されます。

事故を評価していくときに大切なのは、
責任指向ではなく原因指向として考えることです。
誰がしたのかを処罰することで一件落着という、
いわば遠山の金さん風の解決方法はお薦めできません。
なぜ起こってしまったのか、どうすればよかったのか、
対策は何か…等を考えることが大切です。

責任者探しを始めると間違った方向に進む…といわれます。

断じて事故を起こした当事者を罰するための対策には
ならないようにすることが大切です。

次回はより具体的なお話をしていきたいと思います。

【リハビリコラム】介護現場は百花繚乱

今回のリハビリコラムは、
介護現場で働く方々向けに書いてみたいと思います。

よく介護現場では
『“個別ケア”が大切。』といわれますが、
“個別ケア”を推進していくためには
どのようなことに留意すればいいのでしょうか?

“個別”を和英辞典で調べてみると、
discreteness、individual、separate
という単語が出てきました。
一方、“個性”を調べてみると、
one’s personality、individuality
という単語が出てきました。

“個性”を伸ばすことを
develop one’s personality、
“個性”を発揮することを
show one’s individualityといいます。

介護現場から“個別ケア”を考えた場合、
英訳としてふさわしいのは
“個性”individualityとか
personality、の方かと思います。
入居者や利用者の“個性”を
いかに引き出していけるかが
“個別ケア”のヒントになるかもしれません。

一般的に“個別ケア”とは、
その人の人権を守り、
その人らしい暮らしができるよう支援をすること、
そして、その人の人生をふまえた現況に配慮し、
特有の課題やニーズを知り、
生活の質が向上するよう支援することであると
いわれています。

一言でいうなら、
“人を大切にするケア”だといえると思います。

“介護現場は百花繚乱(ひゃっかりょうらん)”と表しましたが、
施設には個性豊かな方々がいらっしゃり、
それぞれ様々な人生を送ってきたという経歴があります。
したがって、一律の介護ではなく、
それぞれの方にあった個別の対応、
すなわち『個別ケア』が必要になります。

そして、個別ケアには
“バランス感覚”が重要になってくると考えております。

高齢者を支援していくうえで、
これらのような暮らしの中に
“メリハリ”をつけていくことが自立支援になり、
安全で充実したケアにつながり、
延いては入居者の“生き甲斐”という
生活意欲の向上につながっていくと思います。

人は排泄したいときにトイレに行き、
体が疲れたり、汚いと感じたりしたときに
『お風呂に入りたい。』と考えます。
また、お腹が空いたら食べたいし、
気分転換したいと感じたらどこかに散歩に行ったりします。

このような当たり前の人間の欲求に合わせ
介護を提供するためには、
ケアスタッフ一人ひとりの“思いやり”が大切です。
そのためには自分たちのペースで介護を提供するのではなく、
入居者目線での支援が大切であり、
個別ケアという概念をスタッフ一人ひとりが理解し、
日々意識しながらスキルアップに心がけることが
重要であると考えます。

そして、個別ケアでは下記の4つの要素が大切であると考え、
そのためのポイントは
“自己決定権の尊重を重視する”ということです。

例えば、『○○しましょう。』と声をかけるのではなく、
『○○しませんか?』と、
疑問形にして声をかけることが自己決定権の重視につながります。

そして、まごころ込めたケアを継続することで、
『心地いい』介護につながっていくと考えております。

今、医療・介護業界は、
ケアからサービスの時代になったといわれております。
“個別ケア”を意識した上で、
生活リハビリを実施していくと、
それが自立支援に直結し、
その先の“心地よさ”につながるのではないかと思います。

みなさんももう一度、
ご自身のケアを見直してみませんか?

【リハビリコラム】元気になる“ツボ”とは?

皆さんは『東洋医学』に興味がありますか?

私は理学療法士として
高齢者のリハビリを専門としておりますが、
あるとき東洋医学のことが気になり、
当時病院で働きながら夜間は専門学校に通い、
鍼灸師の資格を取得しました。

東洋医学を勉強した上で
西洋医学では考えもつかないことや驚くことが多く、
東洋医学の奥深さを感じました。
西洋医学としてのリハビリも大切ですが、
同時に患者や利用者を東洋医学の“目”で診ると、
また違った見解がもてたりします。

今日は、その東洋医学から
高齢者のリハビリを考えていこうかと思います。

東洋医学では
“気”は=エネルギーとして捉えられています。
そして、人間には以下の4つの“気”があるといわれており、
存在する場所やはたらきで
4つに分けられ生命活動を維持しています。

元気(げんき):

もっとも重要で原気や真気ともいわれ、
生命活動の基本となる気です。
主に先天の精(生命の源)が変化したものだと
考えられています。
生まれてからは後天の精(呼吸や飲食物から得られ、
東洋医学でいう「水・血」のもと)によって
補充されると考えられております。
へその下あたりにある「腎」から
全身にくまなく行きわたると考えられています。
元気が不足すると病気にもかかりやすくなります。

宗気(そうき):

胸中にある気のことです。
心臓を規則正しき拍動させ、
肺の呼吸作用と
心の血を循環させる機能があるといわれています。
また、見る、聞く、話す、動くといった
体の機能とも関係します。

営気(えいき):

栄養分が豊かな気のことです。
血液中に存在し、血の流れによって全身を循環し、
栄養分を補給すると考えられています。

衛気(えき):

皮膚から身体の奥まで全身くまなく分布し、
体表面を保護し、
邪気の侵入を防いでいると考えられています。
汗腺を開閉して体温調節する、
臓腑を温めるなどのはたらきがあります。

東洋医学独特の表現方法や言葉が出てきたため、
なかなか分かりにくいと感じる方も
いらっしゃるかと思います。

様々な考え方がありますが、
かなり噛み砕いていうと、
東洋医学でいう「気」は“エネルギー”と考えられており、
それには先天性のものと後天性のものがあり、
「気」により生命が保たれていると
解釈していただけたらと思います。

では、東洋医学でいう
“気血”とはなんでしょうか?

“気血”とは、「気」と「血」に分けられますが、
東洋医学ではそれに「水」が加わり、
体の基本となっていると考えられています。

「気」はエネルギーであり、
「血」は血液、「水」は体液と考えられており、
この3者が体を巡り、バランスをとることによって
生命の活動が成り立っていると考えています。

健康な状態は、
この「気」と「血」と「水」がバランスを取りながら
順調に体内を巡っている状態であるとされ、
反対に病的な状態は、3者の巡りが悪くなり、
バランスが崩れていると考えられており、
病気を治すには
まずこの不調状態を調整することとされ、
東洋医学上その関係性は重要視されています。

また、よく耳にする“五臓六腑”についても
説明しておきます。

“五臓六腑”とは、伝統中国医学において
人間の内臓全体を言い表すときに用いられたことばです。
五臓は陰の臓器であり、
肝臓・心臓・脾臓・肺臓・腎臓を指し、
六腑は陽の臓器であり、
胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦を指します。
さらに五臓に心包を合わせて“六臓”とする考え方もあります。

この五臓と六腑が
陰陽関係(陰と陽で互いに対立する属性を持つこと)に基づき、
バランスを保ち生命を維持していると考えられています。

そのような考え方を基に、
経穴、いわゆる“ツボ” が存在します。

今日は、高齢者のリハビリにも使える
効果的なツボを3つお伝えします。

合谷(ごうこく)

親指と人差し指のつけねのくぼみにある
昔から有名な万能つぼと言われています。

足三里(あしさんり)

膝蓋骨外側下部から指4本分下にあり、
胃腸症状、足の痛みや疲れなどに効くと言われております。
親指と人差し指で“L字”をつくり、
図のように膝に当てたときの
人差し指の先の部分でもあります。

三陰交(さんいんこう)

内くるぶしから指4本分上にあり、
“女性のツボ”と呼ばれ、
冷えや婦人科疾患などに効果があると言われております。

以上の“ツボ”を
症状にあわせて指で押してみてはいかがでしょうか。
意外と効果があるかもしれませんよ。

【リハビリコラム】介護スタッフでもできるリハビリ

今回は特養をはじめ、高齢者施設でできるリハビリについて、
私の経験もふまえ考えていきましょう。

以前、ある特養の介護現場で
リハビリケアの指導をしていた日のことです。

当然介護現場は今も昔もそうですが、
介護スタッフさんは忙しそうに仕事をしていたため、
なかなかリハビリに目を向けることができない状況でした。
そのような中、ある若い特養の介護スタッフさんが
次のようなことを私に聞いてくれました。

「週に1度、
個別リハビリにスタッフが付き合うことができそうなのですが、
優先してやったほうが良い方はいますか?
また、その方には何をすれば良いですか?」

このように前向きなお話をしてくれたことが
当時の私にとっては大変嬉しく思い、
一生懸命応えていきたいと強く思ったことを
今でも覚えています。

そして同時に私が痛感したことは、
『(介護スタッフが)身体機能から
リハビリで何をするべきか判断するのは難しい。』
ということです。

私は理学療法士であり、
解剖学や運動学、生理学など、
身体機能を判断するための勉強をしてきましたが、
介護スタッフさんは
入居者の身体機能を学ぶ機会が比較的少ないため、
その判断は極めて困難であって当然であるということです。

そこで、
『介護スタッフでも身体機能を簡単に判別する方法はないか?』
と考えました。

そして、私の頭の中をよぎったのが
『トリアージ』の応用です。

『トリアージ』とは、
人材・資源の制約の著しい災害医療において、
最善の救命効果を得るために、
多数の傷病者を重症度と緊急性によって分別し、
治療の優先度を決定することです。

この“トリアージ”を応用し、
私の経験を基に様々な資料を鑑み、
試行錯誤した上考案したのがこのフローチャートでした。

忙しい介護現場でも
身体機能面や運動面から実施するリハビリに
優先順位を決めて対応するには有用です。

このフローチャートは、
立位保持が可能か否か、
つかまり立ちが可能か否か等で判断していくもので、
その分類に対するリハビリ例を挙げてみました。
基本的には中等度介助レベルの方から
優先的に実施していくことになっています。

その理由としては、自立レベルや軽介助レベルの方であれば、
ADL(日常生活活動)は自立されている方が多いため、
急激な機能低下は起こしにくく、優先順位は低くなります。
反対に全介助レベルに近い方は、
ポジショニングやシーティング等の環境設定や
集団レク活動や集団体操など、
集団的なアプローチが重要になってきます。

これに対し、中等度介助レベルの方は
介護スタッフが支援をしないとADLが低下してしまうため、
リハビリをして機能維持・改善をしないと
介助レベルも
どんどん亢進(=高い度合にまで進むこと)してしまう
ということになります。

ただし、このフローチャートが
すべての方にあてはまるわけでもありませんので、
随時個別ケアの観点より評価していただければと思います。

あくまでも参考ということですが、
これが結構介護現場では役に立ちました。

リハビリは業務独占ではありませんので、
基本的にはスタッフや家族等でも
適切な技術と評価をもってあたれば実施可能です。
また、“生活リハビリ”という形で
生活の中に入れ込んでいくのも大切です。

特養や有料老人ホーム等の高齢者施設では、
まだまだリハビリが不十分な状況下にあるかと思います。
高齢者がいつまでも元気な笑顔を見せてくれることを祈り、
今後もリハビリに取り組んでいただけたら幸いです。

注)このコラムでの“リハビリ”は、
特養等の高齢者施設の場合の“機能訓練”を指します。
より専門性の高いリハビリ内容に関しては、
主治医の指示や許可が必要となる場合もあり、
看護師やリハスタッフ等の医療スタッフと
連携をとって実施することが重要です。

【リハビリコラム】認知症のリハビリ

未解明なことが多い『脳』について、
4月7日付の米国の科学誌サイエンスで
『脳内で短期的な記憶が長期的な記憶に変わって
固定化される過程を明らかにした』
という発表がありました。

その記事によれば、
マウスの実験において容量の少ない海馬の記憶を、
大容量の大脳皮質に移すメカニズムを
初めて明らかにしたとのことで、
大変画期的な研究結果として載っていました。
大脳皮質にどのように知識が蓄えられるのか、
解明する手がかりにもなるとのことでした。

そこで今日は未解明なことが多い脳について
考えてみましょう。
さらに認知症と関わりの深い海馬と記憶について
関係性を勉強してみましょう。

まず、記憶の種類としては
一般的にはこのように分けることができます。

記憶を保つために脳は様々な回路を持っています。

そこで大切な役割をしているのが、海馬です。

海馬は『記憶の司令塔』と呼ばれ、
新しい記憶に関与すると言われています。
ちょうどタツノオトシゴのようなユニークな形をしており、
左右の脳に存在します。

また、海馬は
『「過去」と「今」の記憶をつなぐコネクター』
とも呼ばれています。

そして大脳の表面にある大脳皮質も
『記憶の保管場所』になっていると言われています。

ですので、脳血管疾患において、
大脳皮質に影響があった場合は、
記憶障害が現れたりします。

一般的に記憶は海馬から大脳皮質へ伝達され、
脳内に残るとされています。
このメカニズムに支障がでると
認知症の症状がでると言われています。

これらの症状に対して、
運動療法や食事療法などが良いとされています。

日ごろから『考える(脳を使う)』ということが大切であり、
『コグニサイズ』のように考えながら運動することも
認知症に効果があると言われております。

この『コグニサイズ』とはどういうものかと言いますと、
国立長寿医療研究センターが開発した
運動と認知課題(計算、しりとりなど)を組み合わせた、
認知症予防を目的とした取り組みの総称を表した造語です。

英語のcognition (認知) とexercise (運動) を組み合わせて
cognicise(コグニサイズ)と言います。

Cognitionは脳に認知的な負荷がかかるような各種の認知課題が該当し、
Exerciseは各種の運動課題が該当します。
運動の種類によって
コグニステップ、コグニダンス、コグニウォーキング、コグニバイクなど、
多様な類似語があります。
コグニサイズは、これらを含んだ総称としています。
国立長寿医療研究センターHPより引用)

また、脳は常に新しい刺激を求めており、
楽しいことやうれしいことなども
認知症予防には良いと言われております。
後ろ向きな考えより、
何事も前向きにとらえることが大切だと言われます。

ここで、皆様に一つ、
私が推奨している『生活リハビリ』の一つとして、
電車の乗り方についての前向きな考え方をご提案します。

例えば、電車で通勤する場合、
『健康のために一つ前の駅で降りて会社まで歩こう。』
という方がいらっしゃるかと思います。
そして運が良ければ、運賃も安くなり、
一石二鳥となることもあるかと思います。


上図のように差額が21円浮く場合は、
『お金が浮いた!!』
と考えることも良いかと思いますが、
そこからもう一歩思考を発展させて、
『会社まで歩けばお金がもらえる!!』
…と考えてください。

『21円浮く。』のと『21円もらえる!!』というのでは、
ニアンスが全然違いますよね。
ちょっと得した気分になり、
モチベーションも上がるのは、私だけでしょうか……?

このように、一人ひとりのちょっとした考え方の違いで
人生はバラ色になるかと思います。

生活にリハビリのエッセンスを加え、
心ときめく健康な暮らしをお送りください。

【リハビリコラム】生活リハビリをエンジョイ!

リハビリコラムが始まってからはや1年となりました。
時が過ぎるのは早いと感じるとともに、
当たり前のことですが、1年経過するとカラダも変化します。

そこで、高齢者のリハビリは
どのようなことを意識すればよいのでしょうか?

1年前にもお伝えしましたが、
高齢者のリハビリは継続することがキーポイントとなり、
そのためにはリハビリが
『うれしい。たのしい。きもちいい。』
となるように工夫することが大切です。

そして、それを継続するために、“生活リハビリ”という
日常生活全般をリハビリと捉えるという考え方は、
大変重要になってきます。

今回は行動を起こすために大切な“脳”について
少し考えましょう。

実は脳は感覚野と運動野に分かれており、
手や足など体を動かしたり、感じたりする部分は
すべて決まっているといわれております。
これはペンフィールドという脳神経外科医が
その昔発見したとのことです。

脳は非常に複雑なつくりをしており、
まだまだ解明されていない部分が
多く存在するといわれております。
その脳の機能として大切なのが前頭葉の働きであり
特に前頭前野の働きが大切であるといわれております。

前頭前野は、思考や創造性を担う脳の最高中枢と考えられ、
生きていくための意欲や、
情動に基づく記憶、実行機能等を
つかさどっているといわれております。
前頭前野は、
いわば脳全体の司令塔や指揮者などに例えられます。

今日は前頭葉をきたえる脳のリハビリをご紹介しましょう。

さて、このイラストの名前を反対から言ってみましょう。

答えはゴリラですから、
反対から言うと、“ラリゴ”です。

次は4文字です。
この動物の名前を反対から言ってみましょう。

答えはシマウマですから、
反対から言うと、“マウマシ”です。

次の問題も4文字です。
この動物の名前を反対から言ってみましょう。

答えはニワトリですから、
反対から言うと、“リトワニ”です。

次の問題は5文字です。
この動物の名前を反対から言ってみましょう。

なかなか見ない動物ですが、
答えはアルマジロですから、
反対から言うと、“ロジマルア”です。

このように、普段生活で見かけたものを
逆から言ってみるだけでも脳のリハビリになります。

考えることにひと工夫すれば、
脳のリハビリになるのです。

皆さんも、街で“ゴリラ”や“シマウマ”を見かけたら、
是非反対から言ってみてください。
脳のリハビリになりますよ。

【リハビリコラム】介護と多職種のコラボレーション

最近“生活リハビリ”という言葉は定着したものの、
その本質を理解し、
理想的なケア体制を確立している施設は
実は少ないという気がします。

先日、一般社団法人全国個室ユニット型施設推進協議会
千葉支部主催で『介護とリハビリのコラボ』という考え方の下、
「目からウロコの“生活リハビリ”促進セミナー」
と題したセミナーを開催させていただきました。

入居者様の個別ケアを推進していくという考え方の下、
“生活リハビリ”をケアメソッドとして推進することは重要であり、
2025年問題を抱えるこれからの介護時代を乗り越える
大切なキーワードの一つであると考えております。

今回のセミナーは、このような社会問題を
リハビリと介護の両面から解決していくということをテーマに開催し、
明日からのケアのヒントになったと思います。

このセミナーを通じて感じたことは、
やはり介護と他職種の連携がいかに大切であるかということです。

一人の入居者様に対して、
その方のオリジナリティーを大切にした支援を提供していくことが
本来の個別ケアであり、
そのためには施設内のより多くの職種が
コラボレート(利的協力)することが
鍵となると考えております。

このメソッドを継続していくことが、
入居者様の心地よい暮らしの継続につながると信じております。

赤枝グループの各施設でも、
常にスタッフ同士の連携について、様々な取組みを考え
実践しています。
“他職種連携”が“多職種連携”になるよう
更なるサービス向上に繋げていきたいと思っています。

そして、『職種』だけではなく、
施設同士でも、そのつながりを密にし、
当法人グループの利用者様全てに、
心地よいサービス(=ケア)をご提供できるよう
引き続き、努力を重ねていきます。

【リハビリコラム】死は人生の終末ではなく“生涯の完成”である

以前は“シュウカツ”といえば、“就職活動”の略でしたが、
今では “シュウカツ”は高齢者が行う“終活”、
つまり、“人生の終わりのための活動”を指すことが多くなりました。

最近“看取り”という言葉がよく聞かれるようになり、
施設で最期を迎えられる方も多くなってきました。

今、改めて“終末期”について
見つめなおすことが大切であると考えられます。

例えば、みなさんが子を持つ親であるとしたら、
子供が生まれた瞬間(とき)の喜びは一生忘れないことでしょう。
そして、人間は一人で生きることは難しく、
支えられながら生涯を過ごします。
このように、お互い、“支え”となりながら生きていくことが、
人生の喜びにつながると考えます。

16世紀のキリスト教宗教改革者であるマルティン・ルターは
『死は人生の終末ではない。生涯の完成である。』
と述べています。
最期の瞬間(とき)まで生きる喜びが続くなら、
きっと人生はすばらしいものになると考えます。

全日本病院協会では終末期とは、

    1. 医師が客観的な情報を基に、治療により病気の回復が期待できないと判断すること
    2. 患者が意識や判断力を失った場合を除き、患者・家族・医師・看護師等の関係者が納得すること
    3. 患者・家族・医師・看護師等の関係者が死を予測し対応を考えること

の三つの条件を満たす場合をいいます。

リハビリ業界でも“終末期リハビリ”という言葉があります。

特養は終の棲家となることが多く、
終末期対応としての入居が多く、
看取り(死亡)退居も多いため、
QOL(生活=人生の質)の向上に重点をおいた
環境の提供を推奨すべきであると考えます。

では“終末期リハビリ”は一体いつ頃をさすのでしょうか?

リハビリは急性期、回復期、維持期(生活期・介護期)というように、
その名称は変化していきます。
様々な捉え方があるかとは思いますが、
私の経験上ではこれらの期間になんらかの著しい機能低下があり、
本人あるいは周りの人々が『死を意識したとき』が
“終末期リハビリ”のはじまりであると考えております。

そして、終末期リハビリは、
『加齢や障害のため自立が期待できず、
自分の力で身の保全をなしえない人々に対して、
最期まで人間らしくあるように
医療、看護、介護とともに行うリハビリテーション活動』
であるため、
巻頭に申したような“終活”にある意味匹敵します。

終末期に属する人を
最期まで人間らしくあるように支えていくのが
我々の使命だと思います。
そして、終末期における支援方法に答えはなく、
その答えは目の前にいる人といっしょに
創っていくものであると考えております。

入居者様にとって有意義な最期が迎えられるよう、
終末期リハビリもふまえ、
まごころ込めたケアに努めたいものです。